ARTICLE健康 コラム|記事

ベストパフォーマンスでは、ご提供する健康にまつわるコラムをご提供しております。
今回のテーマは「「インナードライ」に要注意!水分不足とケガ予防」です。ぜひご覧ください。

ARTICLE THEMA「インナードライ」に要注意!水分不足とケガ予防

インナードライに注意!スポーツの水分不足とケガ予防

― 冬のスポーツで見落としやすい「気づきにくい水分不足」を考える ―

スポーツでケガをしないために、普段どんなことを意識していますか?

ウォーミングアップ、ストレッチ、筋力トレーニング、身体のケア、食事、睡眠。どれも大切なコンディショニングです。

では、「水分補給」はどうでしょうか。

水分補給というと、「夏の熱中症対策」というイメージが強いかもしれません。しかし、スポーツをする選手にとって注意したいのは夏だけではありません。

特に秋から冬の寒い季節は、運動によって身体から水分が失われていても、夏ほど喉の渇きを感じないことがあります。

本記事では、このようなスポーツ時の「気づきにくい水分不足」を、分かりやすく「インナードライ」と呼びます。

水分不足が身体のパフォーマンスにどのような影響を与えるのか。そして、ケガをしにくい身体づくりという視点から、なぜ水分補給を考える必要があるのか。研究データをもとに考えてみましょう。

※「インナードライ」は脱水症を示す医学用語ではありません。また、一般的には肌の状態を表す言葉としても使用されています。本記事では、スポーツ時の「気づきにくい水分不足」を説明するための表現として使用しています。

スポーツ時の「インナードライ」とは?

運動すると体温が上昇します。身体はその熱を逃がすために汗をかきますが、汗とともに身体から水分も失われます。

夏であれば大量の汗や強い喉の渇きによって、「水分を摂らなければ」と気づきやすいでしょう。

ところが気温が下がると、


「あまり汗をかいていない」
「喉も渇いていない」
「今日は寒いから大丈夫」

と考えて、水分補給の回数や量が減ってしまうことがあります。

しかし、実際には運動によって身体から水分が失われています。

水分は失われているのに、自分では気づきにくい。

これが、今回注目したいスポーツ時の「インナードライ」です。

冬のスポーツはインナードライに注意

「水分不足」や「脱水」と聞くと、夏をイメージする人が多いと思います。

しかし、冬でも運動をすれば汗をかきます。

2002年に健康な成人男性10名を対象として行われた研究では、心拍数140拍/分を目安とした1時間の自転車運動による発汗量が、次のように報告されています。


夏:0.90±0.22L
冬:0.52±0.09L

夏より少ないとはいえ、この研究条件では冬でも1時間に平均約0.5Lの発汗が確認されています。

※発汗量は気温、湿度、運動強度、体格、服装などによって大きく異なります。「冬は1時間に必ず0.5L汗をかく」という意味ではありません。

「寒い=水分を失わない」ではありません。

寒い季節は「喉の渇き」に気づきにくい

冬のインナードライを考えるうえで、もう一つ重要なのが喉の渇きです。

Kenefickらが2004年に発表した研究では、4℃と27℃の環境で身体の反応を比較しています。

その結果、寒冷環境では喉の渇きの感覚が最大約40%低下したと報告されています。


水分は失われている。
↓
しかし、夏ほど喉が渇かない。
↓
水分補給が少なくなる。
↓
水分不足に気づきにくい。

「喉が渇いていない=身体の水分が足りている」とは限りません。

これが、寒い季節のスポーツで水分補給を考えるうえで重要なポイントです。

インナードライによる水分不足はパフォーマンスにも影響する?

では、水分が不足した状態でスポーツを続けると、身体にはどのような影響があるのでしょうか。

Jonesらが2008年に発表した研究では、体重の約2.9%に相当する脱水状態と、水分が十分な状態で無酸素性パワーを比較しています。

その結果、脱水状態では、

上半身の平均パワー:7.17%低下
下半身の平均パワー:19.20%低下
上半身のピークパワー:14.48%低下
下半身のピークパワー:18.36%低下

という結果が報告されています。

もちろん、この数値がすべての選手やスポーツにそのまま当てはまるわけではありません。

しかし、水分不足は単なる「喉の渇き」の問題ではなく、筋肉が発揮するパワーなど運動パフォーマンスにも影響する可能性があることが分かります。

水分不足とスポーツのケガを考える

ここから「ケガ」という視点で考えてみましょう。

野球であれば、走る、止まる、方向を変える、ジャンプする、着地する、ボールを投げる、バットを振る。

こうした動作を練習中に何度も繰り返します。

サッカー、バスケットボール、バレーボール、陸上競技などでも、急激な加速や減速、方向転換、ジャンプなど、瞬間的に大きな力を必要とする場面は少なくありません。

筋肉が十分に力を発揮できる状態と、パワーが低下し疲労を感じている状態では、身体をいつもと同じように動かし続けることが難しくなる可能性があります。


水分不足
↓
筋力やパワーなど身体のパフォーマンスへの影響
↓
疲労した状態で運動を続ける
↓
ケガにつながる可能性についても考える

このような視点を持っておくことも、スポーツのコンディショニングでは大切ではないでしょうか。

「水分不足=肉離れ」ではありません

ここは非常に重要です。


「水分不足になると肉離れを起こす」
「脱水が腱や靱帯の損傷を直接引き起こす」

現在の研究では、このように断定できる十分な科学的根拠は確認されていません。

スポーツのケガには、過去のケガ、トレーニング負荷、筋力、柔軟性、疲労、動作、ウォーミングアップ、栄養、睡眠、休養など、さまざまな要因が関係しています。

水分補給だけをしっかり行えば、すべてのケガを防げるというものではありません。

一方で、水分不足によって身体のパフォーマンスが低下する可能性は研究で報告されています。

だからこそ、ケガを予防するためのコンディショニングを考えるときに、「身体の水分状態はどうだろう?」という方向からも考えてみることが大切です。

冬の身体づくりこそ「インナードライ」を見逃さない

特に野球では、秋から冬にかけて身体づくりを目的としたトレーニングが増えるチームもあります。

走り込み、ダッシュ、ウエイトトレーニング、反復練習。

寒い季節だからといって、練習負荷が低いとは限りません。

それにもかかわらず、


「寒いから水分はそれほど必要ない」
「あまり汗をかいていないから大丈夫」

と思って水分補給が減ってしまったらどうでしょうか。


練習負荷は高い。
↓
運動によって水分は失われる。
↓
しかし、夏ほど喉は渇かない。
↓
水分補給への意識が低くなる。

この「冬のインナードライ」を見落とさないことも、寒い季節のコンディショニングでは大切です。

インナードライ対策は「自分の発汗量」を知ることから

スポーツ時の水分不足を防ぐために、まずおすすめしたいのが練習前後の体重測定です。

例えば体重60kgの選手の場合、

練習前:60.0kg
↓
練習後:59.4kg
体重600g減少

さらに練習中に1Lの水分を飲み、尿がなかったとすると、簡易的には、


0.6kgの体重減少 + 1.0Lの飲水
= 約1.6Lの水分損失

と推定できます。

「汗をかいた気がする」ではなく、「実際にどれくらい水分を失ったのか」を知る。

発汗量には大きな個人差があります。同じチームで同じ練習をしていても、必要な水分補給量が全員同じとは限りません。

スポーツのケガ予防を「水分」という方向からも考える

ケガをしにくい身体をつくるためには、一つの方法だけではなく、さまざまな方向からコンディショニングを考える必要があります。

身体を良い状態で動かすために

01 十分なウォーミングアップ
02 適切なトレーニング負荷
03 身体のケア
04 十分な睡眠と休養
05 バランスのとれた栄養
06 自分の発汗量に合わせた水分補給

水分補給だけですべてのケガを防ぐことはできません。

しかし、ケガをしにくい身体づくりとは、何か一つの方法だけに頼るのではなく、身体を良い状態で動かすための条件を一つずつ整えていくことではないでしょうか。

水分補給も、その大切な一つです。

まとめ|インナードライを防ぎ、年間を通じた水分補給を

水分補給は「夏の熱中症対策」だけではありません。

特に秋から冬の寒い季節は、運動によって水分を失っていても、汗をかいている実感や喉の渇きが夏ほど強くないことがあります。

だからこそ、スポーツ時の「気づきにくい水分不足=インナードライ」にも目を向けてみてください。


パフォーマンスを維持するために。
身体を良い状態で動かすために。
そして、ケガをしにくい身体づくりを考えるために。

夏だけではなく、年間を通して「水分」をコンディショニングの一つとして考える。

そして寒い季節だからこそ、スポーツ時のインナードライを見逃さない。

日々のウォーミングアップや身体のケア、栄養、睡眠とともに、水分補給についても改めて考えてみてはいかがでしょうか。

参考文献

1. Jones LC, Cleary MA, Lopez RM, Zuri RE, Lopez R. Active dehydration impairs upper and lower body anaerobic muscular power. J Strength Cond Res. 2008;22(2):455-463. doi:10.1519/JSC.0b013e3181635ba5

2. Kenefick RW, Hazzard MP, Mahood NV, Castellani JW. Thirst sensations and AVP responses at rest and during exercise-cold exposure. Med Sci Sports Exerc. 2004;36(9):1528-1534. doi:10.1249/01.MSS.0000139901.63911.75

3. Hoshi A, Watanabe H, Chiba M, et al. Seasonal Variation of Trace Element Loss to Sweat during Exercise in Males. Environ Health Prev Med. 2002;7(2):60-63. doi:10.1265/ehpm.2002.60

4. McDermott BP, Anderson SA, Armstrong LE, et al. National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Fluid Replacement for the Physically Active. J Athl Train. 2017;52(9):877-895. doi:10.4085/1062-6050-52.9.02

※本記事における「インナードライ」は医学用語ではありません。一般的には肌の状態を表現する際にも使用される言葉ですが、本記事ではスポーツ時に起こり得る「気づきにくい水分不足」を分かりやすく説明するための表現として使用しています。また、水分不足がスポーツ外傷を直接引き起こすと断定するものではありません。発汗量や必要な水分量には個人差があります。

SNS SHARE

RECOMMEND ITEM

この記事を見た人におすすめの商品

  • アルファウォーター
    運動中の水分コンディションを、スタート前から整える。アスリートのための水分補給ドリンク「アルファウォーター」