Archive for 2月, 2020

話題の成分HMBとは?

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日本では、2010年からHMBが食品として使用が可能になりました。
HMBの商品も続々と販売されるようになり、プロテインと比較したり、酷いサイトだと「飲むだけで腹筋が割れる・・・」「腹筋がバキバキになる」「飲むだけで痩せる」なんていう誇大広告で売られているものがほとんどです・・・。くれぐれもそんな効果を期待して絶対に買わないでくださいね。
しかし、しっかりと運動している方、頑張ってトレーニングしている人には役立つ成分なのでご紹介したいと思います。

話題の成分HMBとは?

HMBの正式名は、Hydroxy-MethyButyrate(ヒドロキシメチル酪酸)といい、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つであるL-ロイシンから体内で合成されます。但しHMBは、体内で合成されにくく、3gのHMBを合成するためには、60gものL-ロイシンが必要となります。
HMBは、もともと生体内にある物質で、人有効性データも豊富ということもあり安全性の高いサプリメントとして海外でも多くのアスリートに使用されています。

HMBの効果

報告されているHMBの注目すべき効果は、筋肉の合成を促進して、筋肉の損傷・分解を抑制する作用です。
筋肉中では、筋肉の分解と合成が同時に行われおり、激しい運動時には分解に傾きます。その時、細胞内でHMBが合成されて、筋たんぱく質の合成が活性化され、分解を抑制すると考えられます。
つまりHMBは主として筋肉合成の制御因子として働くということです。

HMBと運動

週3回のウェイトトレーニングを3週間継続した運動強度増加試験、週3回のウェイトトレーニングを4週間継続したベンチプレス重量変化試験、週3回のウェイトトレーニングを3週間継続した時の徐脂肪体重の増加試験、6週間のトレーニングをおこなった後20Kmのマラソンを実施した後血清中のLDH濃度(乳酸デヒドロゲナーゼという筋肉損傷の指標)を測定した筋肉分解抑制試験でも、HMBを摂取した時の方がアスリートにとって良い結果がでています。

因みにどの試験もHMBを3g摂取した群、1.5g摂取した群、プラセボ群に分かれて実施されていますが、すべての試験において3g摂取群が一番良い結果になっています。

HMBと相性の良い素材

HMBと相性の良い素材としてBCAA(分岐鎖アミノ酸)があります。
BCAAは、筋肉のたんぱく質を構成するアミノ酸の35%を占めています。また、筋肉の構成成分としての役割だけじゃなく、エネルギー源としても利用されます。

運動時間が長くなったり、運動強度が増し、エネルギー源としての糖質が枯渇し始めると筋肉が分解されて、筋肉中にBCAAが放出されます。放出されたBCAAは、ケト酸という物質に代謝されてエネルギー源として利用されます。

これを放置しておくと筋肉量が低下することになるので、あらかじめBCAAを摂取しておくことが重要となります。
運動前にBCAAを摂取しておくと、筋肉の分解を抑制するというエビデンスはすでによくご存じだと思いますが、筋肉分解抑制に効果が見られたBCAAの量や摂取タイミングはご存知でしょうか?

おこなわれた実験の結果をみると、筋肉の分解抑制に効果が見られた血液中のBCAA濃度800nmol/mLに到達するために必要な量は1,000㎎~2,000㎎で、効果的な摂取タイミングは運動開始の30分~40分前という結果でした。

HMBとBCAAは、日々激しいトレーニングを繰り返し行う中で、自然と体重が減ってしまう、長く運動すると筋肉疲労が抜けにくいといったような悩みを抱えるアスリートにとって、とても有効な組み合わせだと言えます。

冒頭でもお話ししたように、残念ながら「飲むだけで腹筋が割れる・・・」、「腹筋がバキバキになる」、「飲むだけで痩せる」なんて効果は期待できませんが、トレーニングや競技に真剣に向き合っている方には一度おすすめしたい成分です。

L-カルニチンは脂肪燃焼を高める?

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ダイエットサポートやウェイトコントロールを目的としたサプリメントに配合されている成分にL-カルニチンがあります。
L-カルニチンは、体内でL-リジンとL-メチオニンという2つのアミノ酸から合成されるビタミン様物質ですが、いったい体内でどのような働きをしているのでしょうか。

L-カルニチンの基本的な働き

私たちは、L-カルニチンを食肉などの食品から摂取するほか、主に肝臓で生合成しています。
体内に摂取、あるいは生合成されたL-カルニチンは、小腸から吸収され、血液に乗って筋肉細胞に運ばれるとその中のミトコンドリアで機能を発揮します。

ミトコンドリアは、酸素を使ってエネルギーを生み出す細胞内小器官で、例えるならば、エネルギーを作り出す発電所のようなところです。
この発電所(ミトコンドリア)に運ばれる主な燃料は、ブドウ糖の代謝物であるピルビン酸と長鎖脂肪酸の2種類があります。

因みにですが、長鎖脂肪酸に分類される脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸があります。

ピルビン酸と長鎖脂肪酸がミトコンドリアに運ばれるとき、ピルビン酸は自由にミトコンドリアを覆っている膜を簡単に出入りできるのですが、長鎖脂肪酸はL-カルニチンと結合した形でのみ通過することができるという特性があります。

つまり、L-カルニチンは長鎖脂肪酸をミトコンドリアに運ぶのに必要不可欠な物質なのです。

脂肪燃焼効果を高めるL-カルニチン

ミトコンドリアに入った長鎖脂肪酸は、β酸化(脂肪酸を酸化して脂肪酸アシルCoAという物質を生成し、そこからアセチルCoAという物質を取り出す代謝経路のこと)した後、クエン酸回路(エネルギーを生み出す回路)に入り、エネルギーが作られます。

ドイツのロストック大学の研究では、L-カルニチン3,000㎎を10日間摂取すると脂肪燃焼が促進されるということが証明されましたが、この試験で、2つの課題が残されました。

一つ目は、補給したすぐの脂質がエネルギーになったのであって、もともと体内に蓄積された内因性の脂肪が燃焼されたかどうか、が明らかではないこと。そして二つ目は、3,000㎎という大量のカルニチンを摂取しなければ脂肪燃焼が促進されないのか、という点でした。

その後、日本でも臨床試験が行われ、L-カルニチン500㎎を4週間摂取した場合、体重の減少と血中中性脂肪の低減が確認されています。

また、内因性の脂肪に関しても臨床試験が行われました。
空腹時の被験者に対してL-カルニチン750㎎を摂取してもらい、30分間の自転車漕ぎ運動を行った後、呼吸商(RQ)(呼気ガス組成を分析してエネルギー源として糖質が多く使われているのか、脂質が多く使われているのかを推定する実験方法)で調べた結果、糖質よりも脂質が多くエネルギー源として使われていることが解りました。
空腹時に試験を行ったことにより、もともと体に蓄積された内因性の脂肪が燃焼していることも証明されました。

L-カルニチンを積極的に摂取しよう

L-カルニチンが脂肪燃焼に役立つ成分だということはお判りいただけたかと思います。
但し、さらに効果を高めるためには以下の条件が必要かと考えられます。

・L-カルニチンを500㎎~1,000㎎摂取すること
・小腸から吸収されて血液循環に乗り、細胞内のミトコンドリアまでたどり着くこと
・運動前、活動前に摂取すること
・30分以上の有酸素運動を併用すること
・長鎖脂肪酸を摂取しすぎないこと

L-カルニチンが多く含まれる食材

羊肉 167.8㎎/100g中
鶏レバー 94㎎/100g中
牛肉 76㎎/100g中
ハム・ソーセージ 28.7㎎/100g中
豚肉 21㎎/100g中

今回は、以前、Jリーガーからウェイトコントロールの相談をいただいた時にご協力いただいた原料メーカーさんの「L-カルニチンの即効性」という文献を参考にL-カルニチンのメカニズムをご紹介させていただきました。
L-カルニチンは、現在も、筋肉疲労を軽減する効果や精子を増やす効果など様々な研究が進められています。
今後も目が離せない健康素材です。