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フルマラソンを攻略するための栄養摂取~数日前編~

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グリコーゲンローディング

前回は「長距離走るならとにかく糖質の貯蔵が大事ですよ」というお話をしました。
それと人間の身体は、肝臓と筋肉にグリコーゲンという形で糖質を貯蔵しているんですよということも。

では、レースに向けて具体的にどうすれば糖質を蓄えられるのか?
今回は、身体に糖質をガツンと蓄える方法「グリコーゲンローディング」を考えていきたいと思います。

糖質を蓄えるのだから炭水化物や甘いものをとにかく沢山摂ればいいんでしょ?
と思われている方もいらっしゃると思います。

しかし、残念ながらそれで成功する人はいません(笑)

このコラムでは、なるべく身体への負担が少なく、無理なく効果的にグリコーゲンローディングする方法をご紹介したいと思います。

レース数日前

まず、レース数日前(3日くらいで考えます)から1日どのくらいの糖質を摂取するのかというと、体重×6〜10g程度。
体重60kgの人であれば、360~600g(カロリーにして約1440〜2400kcal)。

普通盛りのご飯5〜10杯くらい。
うどんなら6〜10玉くらいを1日かけて食べる計算です。

正直、結構な量を食べなきければいけません・・・。
最初は、「普段食べない量の炭水化物が食べられて幸せ〜」なんて感じますが、すぐに食べたくなくなったという経験者の方も多いと思います(笑)

成功のポイント4点

  1. でんぷんやマルトデキストリンのようなグルコース(ブドウ糖)が多数連なった構造の糖質を選んで摂取する。
  2. 消化吸収に負担がかかるような量を1食でドカ食いしないで頻回摂取をする。
  3. 「これなら連日で摂っても大丈夫」という自分のお気に入り食品(料理)を決める。
  4. この数日、特にレース前日・当日は消化に時間がかかる高脂質な食事は避け、レース中の腹痛予防のためガスの発生しやすい食品、芋類・豆類・乳製品・乳製品・オートミールや全粒粉パン…などは避ける。

と言ったところでしょうか。
特にトイレ問題でタイムを何度もロスした経験のあるランナーにとって、特に4は大事なポイントでしょう!(私は毎回これに悩まされるタイプです…)

1に関しては、特に筋グリコーゲンの貯蔵には構成糖質がグルコースであるでんぷんを多く含む食品(ご飯、麺類、芋類、小麦製品など)を選ぶことによって貯蔵効率は上がります。

ちなみに砂糖はスクロースといってグルコース(ブドウ糖)+フルクトース(果糖)がくっついた構造をしている糖質で、運動前〜運動中の摂取には良いですがグリコーゲンローディングの際に摂取した場合、でんぷんより糖質貯蔵効率としては劣ります(果糖についてはまた次回)。

2、3に関しては普段と違うことをしていることにより身体やメンタル的にも負担がかかることなので、よりストレスの少ない方法を見つけるのが良いでしょう。

サプリメントにも注意が必要

ちなみにグリコーゲン合成や糖質代謝を助けるサプリメントとしてアルギニン(もしくはシトルリン)やクエン酸が主に挙げられますが、アルギニンは食事から取りきれない不足分以上に摂取する程度で良いでしょう。

クエン酸については下痢するレベルで摂取しないといけないようなのでオススメはしません…。

最後に体内に糖質を貯蔵することにより糖質1gにつき約3gの水分と共に貯蔵します。
そのためローディングに成功した場合、1〜2kg程度の体重増加が起こりパフォーマンスに影響を及ぼすこともあります。

グリコーゲンローディングの方法は個々に合った調整を考える必要がありますが、フルマラソンを走る際にはレース中の失速を予防するために私自身も必ずやっていることなので是非ご参考にしていただけたらと思います。

この記事を書いたライター
安田 裕輔 管理栄養士 / 健康運動指導士 / Best Performance サポーター
病院勤務を経て、現在はメディカルフィットネス施設で栄養相談・指導を行いながら、自身では陸上長距離を嗜んでいる。自己ベスト:ハーフマラソン1時間25分、フルマラソン2時間59分

フルマラソンを攻略するための栄養摂取

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さて、遂に本格的なマラソンシーズンに入って参りました。今年に限ってはコロナウイルスの流行により数々のロードレースが中止となり、毎年レースを楽しんでいるランナーにとっては厳しい年となりそうですね。

それでも主催者の努力により規模を縮小、独自の感染対策ガイドライン設定等でレースを開催する動きもあり、数少ない出走チャンスを得ているランナーの方々もいることでしょう。

その数少ないチャンスを良い形で迎える一つのヒントになればと、私が管理栄養士目線で栄養という観点からレースへの臨み方をご提案させていただきます。

フルマラソン攻略のポイント

ファットアダプテーションは有効?


低糖質高脂質の栄養管理をすることにより、脂質代謝経路であるβ酸化を促進させるファットアダプテーションというものが様々なスポーツ競技者の間で流行したことかありました。

しかしながら、競技思考ランナーのフルマラソン運動強度では、高糖質食を摂取した場合と比べても、パフォーマンスが劇的に向上することはないと、現状の研究では決定づけられてると言って良いでしょう。

(ただし、ウルトラマラソンやアイアンマンレースなど、更に長時間運動が必要となる競技では、有効となることがあるようです。)

スタートラインに立つまでが勝負!

単刀直入に申し上げますとフルマラソン(というかその他ほとんどのスポーツ)において、十分なパフォーマンスを発揮するために重要となるのは「体内の糖質貯蔵量」であるということです。

ではどのように糖質を利用しながらレースを上手く進めていけば良いのか、まず前提として先程書いたようにレースに臨むためにはレース当日、スタートラインに立つまでに体内に糖質を貯蔵することができていることが重要となります。

知っている方もいるとは思いますが、体内に蓄えられている糖質は、グリコーゲンという形で筋肉(筋グリコーゲン)や肝臓(肝グリコーゲン)に蓄えられています。


一般的には筋グリコーゲンが、約200〜400g程度、肝グリコーゲンが約100g程度身体には蓄えられることができます。

満タンにグリコーゲンを蓄えた状態をエネルギーにすると2000kcal弱となります。

体重60kgの人がフルマラソンを走るには約2500kcalが必要であり、体内に蓄えている糖質だけでは足らないどころか、糖質が完全に枯渇するまで人間の身体は糖質を利用することができません。

30Kmの壁をぶち破れ!

フルマラソンでは所謂「30kmの壁」と言われるパフォーマンス低下が度々起こりますが、未だはっきりとした原因は明らかにはなっていません。

「体内の糖質貯蔵量の低下により脳が危険を察知して活動量を落としている」というのが、一つの原因になっているようです。

つまり糖質(グリコーゲン)を体内にしっかり貯蔵することで我々の活動を支配している「脳」をいかに騙しながらパフォーマンスを発揮していくかがフルマラソンを失速なく完走する鍵となります。

次回はレース数日前からの栄養補給法をご紹介したいと思います。

この記事を書いたライター
安田 裕輔 管理栄養士 / 健康運動指導士 / Best Performance サポーター
病院勤務を経て、現在はメディカルフィットネス施設で栄養相談・指導を行いながら、自身では陸上長距離を嗜んでいる。自己ベスト:ハーフマラソン1時間25分、フルマラソン2時間59分